転勤の辞令が出たら:帯同か単身赴任か、マイホームはどうする|5カ国×5人×元教員ママの子育て記録

前編

転勤族という生き方を知らなかった私

田舎の公務員の家で生まれ育った私は、大人になるまで「転勤族」というものの存在を知らなかった。就職して、結婚して、家を継いで、子どもを産み育てる。それが当たり前の社会で生きてきたから。

面白いのは、周りの温度差。私の両親が日本人学校に赴任することになったとき、近所も親戚も、まるで戦地に送り出すようなテンションで見送ってくれた。でも夫の会社は海外赴任がある会社だから、「海外に行ってきます」と言っても、みんな「はいよ~」ってくらいの軽さ。同じ「海外に行く」でも、その会社や時代によって重みが全然違うんだと知った。

そんな私の、結婚してからの引っ越し歴はこんな感じ。パキスタン→埼玉の社宅(2年弱)→イギリス(1年)→東京の社宅(4年)→土地を買って1週間後に南アフリカ共和国(3年)→日本の持ち家(9年)→ナイジェリア(2年の予定)。

一番笑えないのが、土地を買って1週間で南アフリカに辞令が出たこと。夢のマイホームが建つ様子を見られなかった夫が可哀想。コロナ禍で東京の学校が閉鎖になったときは、子どもたちを連れて私の実家に3か月ほど疎開した。転勤による引っ越しだけでなく、こういう予定外の移動も重なってきた。

転勤の辞令が出たら:帯同か単身赴任か

転勤族の人数について、はっきりした全体統計は出しにくいけれど、参考になる数字はある。帝国データバンクの調査(2025年)によると、転勤や配置転換の実績がある企業は全体で36.2%、大企業では75.6%。業種別では金融・保険業が最多で60.0%。つまり転勤族は全国に均等にいるわけではなく、大企業や特定業種に偏っている。

単身赴任については、総務省「就業構造基本調査」によると、有配偶男性のうち単身赴任をしている割合は2022年で2.1%(1987年は1.4%、2017年のピークは3.0%)。女性はさらに低く1.0%。意外と少数派だと分かる。

うちは結婚したときから、夫を単身赴任にさせないと決めている。これは私が勝手に決めたことだけど。一緒にいるから家族になっていく。この人と一緒にいたいから結婚したんだと思っているから。夫の会社のように、一生のうちに転勤が4回くらいある会社だったら、可愛い子育て期間の何年を単身赴任に差し出すことになるんだろう。子どもにとって、お金を届けてくれるだけの人にはなってほしくない。父として、夫としてのモデルでいてほしい。うちは男の子が多いから、なおさら父親の存在が必要だと思っている。

「根を生やす」と決めた場所、マイホームはどうする?

転勤族の中には、社宅を転々とし続ける人もいる。賢い選択だと思う。私は親の転勤で転校を繰り返したという人の話を聞いたり、嫁ぎ先の土地が何年経っても地元と思えない自分の気持ちから、「自分の子どもたちには、ふるさとと思える根っこの生えた場所を作ってやりたい」と思った。だから、どこになるか分からないけど上の子が小学1年生になった場所で定住しようと夫婦で決めていた。

マイホームを手に入れたら経済的には貸すのが正解だと分かっている。それでも貸さなかったのには理由が3つある。

・子どもが5人いて人数が多いから、一時帰国のときに居場所が必要なこと。

・もし子どもが転勤先で不登校になったとき、「帰る場所がない」という状況にはしたくないこと。

・単純に愛着があって他人に貸せないこと。

経済合理性だけでは測れない判断基準があってもいい。が、貸した方が経済的に楽なのになあという思いは拭いきれない。会社の中で借り手を探してくれるところや、近くに身寄りがないなら定期的に空気を入れに来てくれるサービスがあったりする。

後編では、子どもの転校やメンタルケア、転勤族ならではの「あるある」、ママ友との付き合い方について書いていく。

上部へスクロール