田舎暮らしvs都会暮らし。車・病院・教育格差のリアル|5カ国×5人×元教員ママの子育て記録

「公園」という言葉を、高校生まで知らなかった

私が生まれ育ったのは、兵庫県の日本海側(兵庫県は日本海もあるんですよ~)。日本海側の小さな集落。歩いて5分で海。駅から家までの山道では野いちごを摘んで食べ、スキー場までは車で30~40分。遊び場はお寺と海と田んぼの畦道だった。

「公園」という言葉を知ったのは、高校生になってからだと思う。母に「公園ってなに?」「団地ってなに?」と聞いても、話が通じなかった。田舎にはなかったから。

母が都会から嫁いできた人だったので、私は定期的に帰省で都会に行っていた。田舎の生活が大好きで、都会に憧れたことは一度もなかった。ただ、高校生になって将来が見えてきた頃、「このまま、この小さい社会の中で人生を送るの?誰か外に出して~」と思い始めた。

そんな私が今は東京で5人を育てている。田舎と都会、両方の子育てを見てきたから分かることを書いてみる。

田舎のリアル:自然は最高、でも車と選択肢が壁

いいところ
自然がすぐそばにある。これは何にも代えがたい。海沿いだから魚は新鮮で、東京より安くておいしい。松阪牛や神戸牛の元になる但馬牛を育てている地域でもある。家は広く、土地代が安いぶん、出産費用も東京より低い傾向がある。待機児童もほぼいない。幼稚園が高くない(数年前まで月謝は地方で1万円、東京で3万円という差があった)のも大きい。

大変なところ
まず車。一家に一台ではなく、一人一台ないと生活が回らない。バスは1日3本、電車は1時間に1本。店は自転車で行ける範囲にないから、ストックが必須。先生もみんな自家用車で通勤するので、ガソリン代もばかにならない。

今、田舎で困りはじめているのは高齢者のこと。昔は家を継いだ嫁か息子が送迎をしてくれて成り立っていたけど、年寄りだけの家が増えて、運転できなくなったら生活が立ち行かなくなる。ネットで通販や新幹線のチケットを買うのだってみんなができるわけじゃない。日本海側だと、新幹線の駅まで3時間かかる。

病院も同じ。車で30分(電車とバスなら1時間半)かかるから、一つ病院に行ったら1日が終わる。いざとなったらドクターヘリ、という世界。

習い事も少ない。タップダンスやバレエ、ヴァイオリン、ハープといった習い事は、そもそも先生が見つかりにくい。高校になると、就職か四年制大学かで、学校が実質分かれる。地方に転勤した知り合いが、選択肢の少なさから高校のタイミングで東京に戻ることも珍しくない。

人間関係は、よそから来た人がすぐわかる分、安全でもある。結びつきが強いから、嫁に出て帰省しても、いつまでも覚えていてくれて、可愛がってくれる。これは田舎ならではの温かさだと思う。ただ、その裏返しで、お寺が強いとか、はっきり意見を言うと弾き出される、みんなそう思っていても口にしない文化がある。田舎で生まれ育っていても都会的な考えを持った人は、押し殺して暮らさないといけない場面もある。

都会のリアル:選択肢は多い、でも使えるとは限らない

東京に来て驚いたのは、病院に行っても1日が有効に使えること。田舎では考えられなかった。補助金も多く、高校の授業料の支援などは手厚い。ライブや観劇に、ホテル代もかからず交通費も安く行けるのも魅力だと思う。

でも、小さい子連れだと話は別。満員電車に乗れないし、楽しそうなイベントやパークがあっても、料金が高くて人混みがすごいから、結局行かなくなる。選択肢の多さの恩恵は、子どもが小さいうちはほとんど受けられなかった。

数字で見る田舎と都会の差、そして「地元」のこと

地元の大学に進学する人の割合(大学進学者のうち、地元の大学を選んだ人)は、全国平均で45.4%。愛知は72.5%、東京は69.8%に対して、奈良と鳥取は15.1%(2025年4月入学・旺文社教育情報センター)。つまり鳥取の大学進学者の約85%は、県外の大学に進んでいる。

県外に出る前提なら、仕送りがかかる。首都圏の私立大学の調査(東京私大教連・2020年度)では、自宅外通学者の受験から入学までの費用は220万円で、自宅通学者(160万円)より50万円以上多い。仕送りは月平均8万2,400円で、そのうち家賃が約8割を占めていた。

もう一つ、田舎で進んでいるのが学校の統廃合。公立小学校は平成元年度の24,608校から、平成30年度には19,591校へと、約30年で約5,000校減った(文部科学省・総務省資料)。6つの学校を1つにまとめて、周辺の子はマイクロバスで通う。地域の文化が大切にされなくなる心配はあるけど、一方で、1クラス3人では話し合いもできないし、出てくるアイデアも乏しくなってしまう。難しい問題だと思う。

最後に、「地元」のこと。親の介護や、子どもを田舎で育てたいと思って、30~40代で地元に戻ってくる人もたまにいる。でも、子どもにとっては、やっぱり地元にならなくて、都会に戻っていく。幼少期を過ごした場所でないと、そこは地元にならないのだと思う。

それは私自身も同じ。今は東京に家を買って住んで、子どもの行事にも出ているけれど、いつまで経っても、ここが地元とは思えない。不思議なものだと思う。

帰省の問題もある。子育ての援助、親の介護や帰省、田舎までの交通費は高い。夫は東京育ちなので、ど田舎への帰省を「パスポート持った?」とか笑いながら自分の経験としても、子どもたちの経験としても、すごく喜んでくれている。田舎と都会、どちらの世界も知ることで、子どもたちもいろんなことを考えられるようになると思う。

田舎が良いか、都会が良いか、答えは一つじゃない。ただ、「公園」という言葉を知らずに育った私が、東京で5人を育てて今思うのは、どちらにも、そこでしか手に入らないものがあるということ。

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