世界のどこでも子は育つ〜5カ国×5人×元教員ママの子育て記録〜ピアノが弾けない子は音楽に向いてない

後編:「ピアノが弾けない子は、音楽に向いてない」は間違いでした

 

私も、全然弾けなかった

私自身、小さい頃からピアノを習っていました。真面目に練習する子ではなく、決して上手ではありませんでしたが、好きで、気分転換になってくれたことが何度もありました。ピアノにはいろんな効果があるとも言われますよね。両手で違う動きをするから脳の両方を同時に使う訓練になるとか、楽譜を読みながら指を動かすから「同時処理能力」が鍛えられるとか、継続練習で忍耐力が育つとか。小学校で全員が鍵盤ハーモニカをやることもあって、私の中には「ピアノが基礎、他の楽器はその後」っていう固定観念がずっとありました。きょうだい平等にって思いもあって、長男も長女も、4歳になったらピアノを習わせました。

これが、大間違いでした。

「ピアノは基礎」は間違い

長男は、体験して「やりたい!」って言ったくせに、いざ始めると椅子の上で手を突っ張って脚を上げ、体操選手みたいな格好をして、「見てみて!」ってまったくじっとしていません。それでも理解はしていたみたいで、発表会は楽しんでたと思います。長女は大人しく座ってくれましたが、どっちが高音でどっちが低音か、いつまで経っても覚えません。高校生になった今でも「ドレミファソラシレド~」って、気持ちの悪い言い方をします。なんでこんなことも分からないのって、当時の私はイライラしてました。二人ともテキストブックを破ったこともあります。長男のレッスンには2歳差の下の子二人も連れて行かなきゃいけなくて、私自身が疲れ果ててました。お金の支払いより、レッスンに連れて行くことの方がよっぽど大変でした。結局、二人とも引っ越しのタイミングで2年ほどで辞めました。二人とも、大喜びでした。

私は、娘には音楽の才能がないんだと、その時は諦めました。

ところが彼女が中学生になった頃、コロナ禍で音楽の授業からリコーダーや歌唱ができなくなって、代わりにギターの授業が始まったんです。すると、小学校の頃に何も楽器を習っていなかったはずの娘が、「ギターを習いたい」って言い出しました。それが驚くほど楽しそうに続いて、今はベースを習っています。

ここで私が学んだのは、ピアノができないからってその子が楽器に向いてないと考えるのは大間違いだということです。楽器の習得には、理解度や手の器用さが、発達段階、性格、楽器によって、合うタイミングがある。「ピアノをやってから他の楽器、ピアノが基礎」なんて考え方自体が、そもそも間違っていたんです。最初からやりたい楽器を習わせたほうがいい。私自身、ハープやギターに挑戦したことがありますが、ピアノの感覚が染みついているせいで、かえってやりづらいと感じることもありました。

この娘を通して学んだこと、私が小学校で音楽の授業をする上で、本当に役立っています。なぜ鍵盤ハーモニカをやるのか。「これが弾けないからって、音楽が向いてないとは思わないでね。あなたには合うタイミングと楽器がちゃんとあるはずだから」と、私はいつも子どもたちに伝えています。

向いてないんじゃない、合ってなかっただけ

四男は、人前で何かをすることが大好きな子です。幼稚園のお誕生日会で「将来はシンガーになりたい」って宣言して1曲歌いきり、中学の時はテスト直前に地域のカラオケ大会に申し込んで、醤油や砂糖なんかの賞品をもらってきてくれたこともあります。試験前だっていうのに、我が子ながらブレない。子役を育てるスクールに入れることも検討しましたが、地域の小さな舞台でも人に喜んでもらえる体験を重ねるほうがいいかなと思って、入れませんでした。

この子はじっとしているのが苦手です。「そんなにじっとできないんだったらタップダンスやれば?」って勧めました。漢字を全く覚えようとしないので、暗記力を鍛えてこいと楽譜を使わない和太鼓を習わせました。歌は毎回新しい曲、英語のみ、楽譜なし、耳で聞き取ってパートごとに歌うゴスペルにも入れました。どれも、生き生きと取り組んでいます。苦手なことを無理に克服させるんじゃなくて、その子の得意な感覚(耳で覚える、体で覚える)を入り口にする。これが、四男を見ていて見つけた方法でした。

実はこのタップダンス、オンラインで習っています。もちろん難しいところもありますが、きょうだいの多いお母さんたちに、これだけは声を大にして伝えたい。習い事は、支払いより送迎のほうがずっと大変です。雨の日でも家の中で完結するオンラインレッスン、本当に楽です。オンラインで習えるもの、あれはもう文明の利器。心からおすすめします。

弾けなくても、音楽は残る

長男はドラムがとても上手です。彼が学校に足が向かなくなっていた時期も、毎日のようにドラムを叩いていました。夫は、その様子をこう表現していました。「整えるようにドラムを叩いている」。言葉にできない気持ちを、音とリズムで整理していたのかもしれません。音楽が、彼にとって大切な逃げ場所であり、支えだったんだと思います。

それぞれ違う楽器を選んだ子どもたちですが、もったいないので、お互いに弾き方を教え合って体験することもあります。すると、「すげーなー」って、素直に尊敬し合う場面が生まれます。海外にいた頃、ホームパーティーで数家族とコンサートを開いたこともあります。楽器のできないパパは、下の子をおんぶしながら、最後にチーンと一音鳴らすだけの役目でしたが、それでもとても楽しい時間でした。おばあちゃんの誕生日には演奏動画を送り、おじいちゃんの古希のお祝いには、全員でボディパーカッションをして送って彩りを添えたりします。

スポーツについては、結果的にみんなバラバラのものを選びました。その子の性格に合いそうなものを勧めはしますが、最後は本人が自分で選びます。一番の願いは、健康を維持するためにやってほしいということ。

私のこの性格ですから、オリンピック選手やステージに立つようなサポートを必要とする子は、きっとうちには来ないんだと思います。あはは。

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