ナイジェリアDay2:新しい我が家、安全のためのルールと工夫

Day2:新しい我が家、安全のためのルールと工夫

20年前と今

20年前、パキスタンに住んでいた頃はLINEなんてものはなかった。大使館からのテロ情報や緊急連絡網が頻繁に入るので、携帯電話は肌身離さず持つことが必須だった。何が起こるか分からない。だから携帯は必ず持つ。それはあの頃も今も変わらない、海外生活の大原則だ。

パキスタンも、その後住んだ南アフリカも、住まいは戸建てだった。ガードマンとセキュリティドッグを雇い、塀にはぐるりと電柵が張り巡らされていた。家の廊下にも檻のようなドアがあり、寝室に入ったらセキュリティアームをかけて眠る。家の鍵は、信じられないことにケーキの型いっぱいの量があった。忘れ物をして家に戻ろうものなら、鍵を開けるだけで一苦労だった。

今回のナイジェリアは、ガードマンが常駐する大きな長屋のような住居に住んでいる。敷地内は歩いてもいいけれど、それでも警戒を解いていいわけではない。網戸は、マラリアの心配があるので必ず閉める。

我が家のルール

これまでの経験も踏まえて、この国で暮らす上でのルールを、家族で決めている。

夫が出張で家を空けることや、いつ戻るかといった情報は、外では話さない。毎日同じ時間に同じルートで行動しない。外国人が目立つような場所には近づかない。会社が定めた行動範囲から絶対に出ない。人の多い場所では、携帯を入れたポケットを時々確認する。曜日や時間帯によって、避けた方がいい場所もある。

道端の物売りとは目を合わせない。車の窓は開けない。車を降りるときは、バッグを見える場所に置いていかない。家の中でも、人目を引くようなアクセサリー類は見えないところにしまっておく。選挙や治安情勢の情報も、日頃からできるだけ入れるようにしている。

学校に入るのにも、空港のようなセキュリティチェックがある。子どもたちにとっては、それが「普通」の日常になっていく。

一番怖いのは、誘拐

こうしたルールの中で、一番気を張っているのは誘拐のリスクだ。

空港からの車の中で「一番怖いのは誘拐だから」と夫が言うと、中学生の息子に聞かれた。「誘拐って、なんのためにされるの?」

正直に答えた。身代金を要求されるか、人身売買か、あるいは臓器として売られてしまうこともある、と。

きれいごとを言うつもりはなかった。この国で暮らす以上、子どもたちにも本当のことを知っておいてほしかった。

「勘を働かせる」ということ

ルールを教えるだけでは足りないとも思っている。店で誰かと話すとき、世間話のように見えて、実は家の場所や収入を探ろうとしている人もいる。「この人、なんだか怪しいな」「この道を一本入ったらまずそうだな」――「勉強嫌だっていうけど、こういうのも勉強だよ」そういう勘を、自分の頭で働かせられるようになってほしい。

子どもたちには、ルールを丸暗記させるのではなく、「なぜそのルールがあるのか」を一緒に考えるようにしている。行動範囲が制限されているのも、外に自由に出られないのも、不便で窮屈なことに変わりはない。でもそれは、家族全員が無事にこの2年間を過ごすための、譲れない土台だ。

窮屈な暮らしの中でも、子どもたちが安心して過ごせる場所を作ること。毎回海外に行く時の目標は無事に子どもと帰国すること。

上部へスクロール