世界のどこでも子は子は育つ〜5カ国 5人 元教員ママの子育て記録 学校編

日本の学校教育、優れているところと負けているところ

5カ国の教育現場を見てきて、よく聞かれることがあります。「日本の教育って、海外と比べてどうですか?」正直に言うと、優れている部分と、明らかに負けている部分の両方があるというのが、私の実感です。今日は、その両面をできるだけフラットにお伝えしたいと思います。

優れている点①:誰も置き去りにしない「底上げ」の力

日本の教育で、私が一番優れていると感じるのは「底上げ」の力です。家庭の事情で学校に通えない子どもがほとんどいないこと。そして、基礎学力をつけるための指導技術が、全国どこでも一定水準以上に行き渡っていること。これは、当たり前のようでいて、世界的に見ればとても稀なことです。国別の平均IQで日本が常に上位に位置しているのも、この「底上げ教育」が国全体に浸透しているからだと思います。

優れている点②:掃除と整理整頓

子どもたちが自分たちの学校を掃除することも、整理整頓も日本の教育の強みです。例えば画用紙一枚にしても、端から順番に使い、真ん中だけをくり抜くような使い方はしません。整理整頓が徹底されているので、同じ教材を重複して発注してしまうようなこともまずありません。

優れている点②:整理整頓と掃除緻密な連絡体制

学校からのお知らせも、日時から持ち物まで細かく明記されていて、迷うことがない。海外だと、お知らせが行事の1週間前とか前日だったり、どこか別に詳細が書いてありますか?っていうくらい説明が少ないのです。この「信頼できる緻密さ」は、海外で暮らすとありがたみが身にしみてわかります。

負けている点①:「できる子」を伸ばす力の弱さ

一方で、日本の教育が明らかに弱いと感じるのが、できる子をさらに引き上げる力です。「底上げ」に強みがある分、「頭一つ抜けた子」を積極的に伸ばす発想が、制度としてあまり用意されていません。

長男が帰国子女だった頃、「英語はもう十分できるので、その時間に遅れをとっている国語を自主勉強させてほしい」と学校にお願いしたことがあります。けれど、それは受け入れてもらえませんでした。「平等」「公平」という価値観のもとでは、一人だけ特別な扱いをすることが、なかなか許されないのです。南アフリカの学校では、授業中に課題を終えた子から、それぞれ別の課題に進んでいく光景をよく目にしていました。「みんなができるまで待つ」姿勢が当たり前になっている日本の教室とは、対照的でした。

負けている点②:ルールの細かさが奪う、「自分で考える」機会

日本の学校は、ルールが非常に細かいことでも知られています。以前、子どもの筆箱について「鉛筆が何本入るものにしてください」という指定があり、実際に「うちが買った筆箱は1本足りないのですがいいですか」と伝えたところ、担任の先生から「買い直してください」と言われて驚いたことがあります。水着にしても、露出や泳ぎやすさとは関係のない理由で、毎年買い替えを求められることがあります。

途上国での暮らしを経験した身からすると、「鉛筆が2本入れば、あとは自由でいいのでは」「筆箱なんて買えない国はたくさんあるのにこの小さなルールのために買い直すの?」と、つい思ってしまいます。南アフリカで長男と長女が通っていた現地校の門には、「敷地内でのけが・駐車場での事故・死亡について、学校は一切責任を負いません」という看板が掲げられていました。笑い話のようですが、裏を返せば「あとは自分で考えて行動しなさい」というメッセージでもあります。ルールで先回りして守ってあげることと、自分で判断する力を育てることは、時にトレードオフの関係にあるのかもしれません。

負けている点③:カリキュラムそのものが遅れている、英語教育

私自身、学生時代から英語が好きで、大学まで成績も悪くありませんでした。それでも、イギリスで暮らし始めた頃、5歳の子どもとまともに会話ができませんでした。「手を合わせましょう」も、「足を揃えましょう」も、「鬼ごっこしよう」も、日本の学校では一度も教わったことがなかったからです。これはもう、個人の努力ではなく、カリキュラムそのものの欠陥。初めて敷かれたレールを歩むこと、日本の教育を疑った瞬間でした。

イギリスで一緒だったインドネシアかマレーシア出身の子どもたちは、驚くほど英語が流暢でした。理由を聞くと、算数や理科の授業は全て英語で学んでいるとのことでした。ヨーロッパでは3カ国語を話せる人がごく普通にいます。日本人は決して能力が劣っているわけではありません。むしろ、とても賢い国民だと思います。だからこそ、英語が話せないことによる機会損失の大きさに、もっと自覚的になってもいいのではないかと感じます。小学3年生から始まる外国語教育は、脳の発達の仕組みを考えると、正直、遅すぎるのです。

最後に

底上げの力、整理整頓、緻密な連絡体制——日本の教育には、他国には真似のできない誇るべき強みがあります。同時に、できる子を伸ばす仕組みの弱さ、細かすぎるルール、時代に合わない英語教育など、変わってほしいと感じる部分も確かにあります。どちらが優れている、劣っているということではなく、両方あるという事実を、5カ国を見てきた者として、これからも冷静に伝えていきたいと思います。

 

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