停電は日常。海外子育て歴4カ国のママが実践する備え
駐在生活で私が最初に求めるものは、実はシンプルだ。お湯が出ること。電気がつくこと。そしてダニがいないこと。この3つさえ揃っていれば、たいていのことはなんとかなる。逆に言えば、この3つが揃っている国の方が珍しいということでもある。
日本ほど「完璧」な場所はない
学生時代のバックパック旅行から始まって、これまで途上国も先進国もいくつか見てきた。その経験から言えることがひとつある。日本ほどパーフェクトな場所は、他にない。
蛇口をひねればお湯が出て、スイッチを押せば電気がつき、水道水をそのまま飲める。停電も断水もほとんど起きない。そんな環境がどれだけ特別なことか、海外に出るたびに思い知らされる。
水道水は飲めない、が当たり前
朝起きて、歯ブラシを片手に蛇口をひねる。次の瞬間、ため息が出る。なぜだか分かるだろうか。水道水では歯を磨けないからだ。歯ブラシにも、野菜を洗うのにも、茹でるのにも、ミネラルウォーターを使わなければならない。
水道水がそのまま飲める国は、実はそう多くない。日本の下水処理や水道管の管理技術は、世界的に見てもかなり高い水準にある。幼稚園でからっぽになった子どもたちの水筒に水を足す時、「水道水が飲めない国もあるのよ〜」というと驚いていた。小学4年生になると水道局に見学に行く授業があるけれど、他国と比較して教わることはあまりないだろう。
洗濯やお風呂には水道水を使えても、口に入れるものには現地の人でさえミネラルウォーターを使う。そのミネラルウォーターは1本20リットル近くあり、値段自体は高くないのだけれど、とにかく重い。包丁やまな板も、洗ってすぐそのまま使うというわけにはいかない。南アフリカでは、水道管が古くなっているせいで、道路から大量の水が流れ出ている光景をしょっちゅう目にした。また断水になることもあるので水を買い置きしていた。
日本のお風呂は世界一
お風呂については、はっきり言える。日本のお風呂は本当に素晴らしい。
学生時代のバックパック旅行で、シャワーにお湯が欲しいと頼んだら、別料金でお湯を持ってきてくれたことがある。木を拾い集めて沸かした湯なのだから、そりゃ別料金にもなるわよね、と当時思ったのを覚えている。
日本のお風呂は保温技術が優れていて、温度調節も細かくできて、トイレと分かれている。当たり前だと思っていたその全部が、実はすごいことだった。パキスタンや南アフリカでは、お湯を沸かす機械の能力の関係で、バスタブ1杯分のお湯しか用意できない。だから家族で時間差に入るか、シャワー室で体を洗ってから、みんなで順番にお湯の張ったバスタブに浸かっていた。
雨が降ると息子が喜ぶ
ナイジェリアでも、さっそくインフラの洗礼を受けた出来事があった。雨が降るたびに、ネット回線が頻繁に切れてしまうのだ。
「雨季だからねぇ」と、私がつぶやいたときのこと。息子が「雨季っていつまで?」と聞いてきた。「あと2ヶ月くらいかな」と答えると、「短っ!」の一言。
その「短っ!」に、思わず笑ってしまった。2ヶ月を「短い」と感じられる感覚は、もう彼なりにこの国での暮らしに順応し始めている証拠なのかもしれない。私からすれば、雨のたびにネットが切れる2ヶ月は決して短くはないのだけれど。
ネットが繋がらなければ、勉強もままならない。オンラインでの家庭学習も、日本語の教材のダウンロードも、すべてネット頼みだ。息子は雨が降ると勉強しなくていいので嬉しいのだ。停電や断水と同じくらい、このネット回線の不安定さが、実は一番日常に効いてくる。
「不便」を前提に暮らしを組み立てる
これまで4カ国を巡ってきて分かったのは、インフラの不便さそのものより、「不便であることを前提に暮らしを組み立てられるかどうか」の方が大事だということだ。
停電すればすぐ使えるライトを手の届く場所に置く。断水に備えて水を溜めておく。ネットが切れても進められるよう、紙の教材もいつも一定量ストックしておく。完璧な環境を求めるのではなく、不完全な環境の中でどう工夫するか。それが、海外での子育てで一番鍛えられる力なのかもしれない。
息子の「短っ!」という一言を聞きながら、この2ヶ月、いや、この2年間で、子どもたちがどんな感覚を身につけていくのか、少し楽しみになった。